それでも地球はまわってる

好きなものを好きと叫ぶ。自分がダメだと自覚する。それでも私は生きているし、世界は動くし、地球もまわってる。

『蜩ノ記』を観てきて、若侍がいると実感した感情を書き連ねる。

というわけで、もう先週の話ですが、観て参りました。

 

蜩ノ記


映画『蜩ノ記』公式サイト

 

10年後の切腹を命じられた男。残された時間を、あなたならどう生きるか。

~公式HPより~

 

月に1回は映画館に行くようにしていて、

その時に予告編とかを観ていて面白そうだなーと思ったし、また岡田君が出るっていうのも知っていて、

だから観てきた。

 

でも、岡田君が出ているからっていう動機よりは、

数年前・・・たぶん東日本大震災が本当に契機だったんだけど、

色々と思うこと、考えることがあって、

個人的に平和学習&歴史勉強を進めていたわけで。

 

もともと自虐史観からはだいぶ早い段階で脱却してたんだけど、

東日本大震災を経て、

世界中から日本に対して"祈り"が届いて、

そしてあんまり知らなかった事実を知り、

 

「もっと日本について勉強しないといけないよね。

 未曾有の災害において、関わりのある欧米先進国だけじゃなく、

 表だった交流などは一般的にはあまり知られていない中東諸国などなど、

 これだけ世界中から即座に祈りが、支援の手が差し伸べられる国って、

 そうそうないし、なんでそう思ってもらえるのかちゃんと知らないとだめだ」

 

って思ったのね。

 

で、色々調べていって、まぁ色々思ったんだけど、結論として

 

今自分がここに存在するということは、

命を繋いで来てくれた人たちがいたからこそで、

きちんと歴史を知り、自分の遠い祖先たちが

どういう生き方をしていたかを知ることが大事だ

 

ということに至ったわけ。

 

 

前置きが長くなったけど、

そういうわけで、そういった「私の知らない、でも確かにこの国にあった時間を描いた作品」と言う視点で、観なくちゃ!っていう思いが強かった。

 

 

で、日本史において稀有な時代だった江戸時代。

今とは全く違う社会制度で成り立っていた時代。

日本に根付いている「理不尽を美徳として受け入れる風土」が確固たるものとして存在していた時代。

 

 

そんな時代、正しく「理不尽を美徳として受け入れる一人の武士」と「それを取り巻く家族」の物語。

 

 

あらすじや細かい感想は、映画批評サイトなどの口コミに譲るとして、

ここは私が思ったことをつらつらと書き連ねる場所なので、

ただの感想文になります。でもネタバレするので、お厭な人はご注意を。

もちろん、岡田君に対する興奮冷めやらぬ想いをぶちまける可能性もありますので、

それも踏まえて続きが気になる方は以下どうぞ。

 

 

 

<全体の感想>

良かった。声を大にして言う。良かった。

 

3年と言う月日をまとめているので、正直物足りなさはあった。

役所さん扮する「戸田秋谷」を中心に、

お目付役として遣わされた岡田君扮する「檀野庄三郎」が秋谷に師事するようになり、また秋谷の娘である堀北真希扮する「薫」と心通わせるようになり・・・っていう、

諸々の描写の説得力が弱いのは否めない。

気づいたら1年過ぎてて、

気づいたら秋谷を師として仰ぎ、

「武士は畑仕事はしない」とか言っていたのに気づいたら鍬を振ってるし、

薫と気づいたらいい仲になってたりとか、本当に展開が急なの。

観ている人が行間を読まなきゃいけない。

でもそんなのは原作ありきの映画には良くある話だから大した問題じゃない。

 

そういう「行間」を読み取って観ていけば、

あの映画の中に生きていた「彼ら」は本当に見事で、

話としても凄く引き込まれるものだった。

逆にいえば、役者たちの演技が素晴らしかったので、何も気にならずにあの「蜩ノ記」の世界へ入り込み、観終わった後に「良かった」と言う感想しか出てこなかったともいえる。

 

「面白かったね!!!」

っていうエンターテイメント的な感動はない。興奮もない。

ただただ単純に、淡白に、

「凄く良かったね」

っていう感情が湧き起こるような話。

興奮はないけど、心にしっとり、じんわり、そしてずっしりと響くものが残る映画。

 

一言で言ってしまえば、余韻が素晴らしい。

 

<登場人物について>

・戸田秋谷(役所広司)

見事でした。抑えた演技が美しかった。

10年後に死ぬってわかってて、しかもそれが全くもって自分には非のないことで、

むしろ不名誉を被るのに、それを淡々と受け入れ、残りの生を全うしようとする「武士」を見事に演じていた。

もちろん、映画にはない7年間の間に、たくさんの葛藤があったかもしれない。

それでも、最終的に行きついたのは、「死を自分のこととしたい(確かこんなセリフがあったはず)」という思い。

切腹=死ではあるが、

その「死」は決して誰かから強制されたのではなく、

「ここが命の使い時」と判断しそれを受け入れた、ということ。

これって、「永遠の0」を観て、特攻隊について勉強した時も思ったことと同じ。

それがいいか悪いかは別にして、日本人の精神性はやっぱりそこにあるのか、って思った。思ってしまった。

でも、彼がこの世にしがみつかず、穏やかに逝くことを選択できたのは、

やっぱり「家族あってこそ」だと。

娘・薫も良き伴侶を得て、嫡男・郁太郎も無事元服し、戸田家も安泰。

妻・織江には辛い思いをさせるが、

10年の間に夫婦の間では言葉では言い表せない幾多のやりとりがあったことだろうし、それだけ十分に話し合ったはずだからきっと大丈夫。

 

終始淡々と「静」の演技で、途中嫌な役人を「小話」でやりこめたところとかは、なんだか日本人の「粋」を感じたし、

郁太郎が友のために立ち向かったことを受け、父であり、村の良き相談役であった立場として、不要な理不尽を領民に強いることはしてくれるなと感情を露わにするとことか、とにかく見事だった。

 

・薫(堀北真希)

可愛い。ひたすら可愛い。

武家の娘が板についてました。

大和撫子。父が謂れのない罪で切腹を命じられ、それを受け入れ、母を支え、真っ直ぐ前を向いて生きていく娘っこ。

なんて健気(´;ω;`)

撮影前に色々演技指導?とかあったらしいけど、

とにかく所作が一つ一つ美しかった。

特に「舞」のシーン。

プロじゃないので、やっぱり他の踊り子さんと比べればたどたどしさはあったけど、

彼女の凛として透明感のある佇まいが本当に素晴らしかった。あれは庄三郎じゃなくても見惚れるわwww

そして、庄三郎が薫に思いを告白(し損ねたけど)した後、

一つしか取れなかった鶏の卵を父ではなく庄三郎につけちゃうとか、

わかりやす過ぎ可愛過ぎダメだ死ぬ。

ってなった。

ちゃんと二人夫婦になったことが、我が子のことのように嬉しかったのは言うまでもない。

 

原田美枝子(織江)

美しい。ひたすらに美しい。

武家の妻を見事に体現していた。

夫が10年後に死んでしまうとか、悲しくないわけがない。辛くないわけがない。

でも、それを支え見送るのが妻の役目。

彼が「死ぬことを自分のこととしたい」という思いを叶えるため、妻はできる限りの支えをした。

印象的なのは、やっぱり、夫が最後に袖を通す死装束を織江が繕うんだけど。

そこで静かに泣くのね。

嗚咽を漏らすのね。

泣ける。ひたすらに泣ける。

なんで自分は愛する夫の死を演出するものを準備せねばならないのか。

なんで自分はこんな理不尽な目に遭うのか。

絶対にそう思ったと思う。でもそれを、織江自身も 

「夫の死を自分のこととする」

っていう思いを持って、その役目をやり遂げた。

夫が自分の腹を切るための刀も、織江が用意した。

刀に不備があれば、夫が苦しむ。でも、最高の状態にしても、夫を一瞬で奪い去るだけ。

何その理不尽さ。

でもそれを受け入れるのが、あの時代、武家の女の努めだったんだろうと思うし、

今の時代では理解できないけど、

あの時代ではそれが当たり前だったんだから、

それを取り乱すでもなく全うした織江は、武家の妻として本当に最高の人だと思う。

芯が強くなければああはなれまい。

大和撫子。憧れるわ。

 

・檀野庄三郎(岡田准一)

さて、こっからテンション変わることをお許しください。

 

侍がおった。正に侍がおったよ。

 

岡田はもはや現代人ではない。彼は現代に生きる「侍」だ。

色々なインタビューで言ってたけど、

「所作一つ一つに意味があって、それを美しく演じるために努力をした」

とはよく言ったもので、

 

本当に侍だったよ。

 

でさでさ、最初喧嘩しちゃって罰として秋谷のもとに行くんだけどさ、

その相手がさ、青木崇高くん。

「フライ ダディ フライ」でスンシンとその仲間たち!を演じた青木君www

うぉぉぉまじでかーーーー!!

って動揺した。それだけ(をい)

 

最初はさ、藩命としてきたんだ!って肩肘張ってるんだけど、

映画には描かれない行間の部分で秋谷とその家族に寄り添い、それを守ろうっていう気に変わっていくのね。

行間読んでるから違和感はないけど、まぁ不自然ではあるな。うん。仕方ない。

 

でもでもでも!!!

まさかこの映画でもお目にかかれるとは思っていなかった岡田無双。

 

・最初の喧嘩のシーン

・郁太郎とやりあう(語弊があるが)シーン

・祭でのひと悶着を諌めるシーン

・中根様のところで暴れる(語弊があるが)シーン

 

一人心の中で「ふぉぉぉぉーっ!!」ってなってたし、

「岡田無双再びww」とかってニヤニヤしちゃったし、もう大変だったよ。

 

あと、本人が「ここは見所!」て言ってる「殺陣」ね。

 

剣術の練習をするシーンがあるの。予告とかでも良く流れてたんだけど。

「うぇいっ!!うぇいっ!!」って剣振るの。

 

それがね。美しいしかっこいんだけどね。

 

なんか笑ってしまった。ごめん岡田君。

素晴らしかったんだけど、なんか面白かったんだ。

本当にごめん。庄三郎。

 

薫に井戸のところで想いを告げようとするところとか、

 

「ちょ、いきなり距離詰めたら怖いってwww」

 

って突っ込んだし、その後の卵の件で戸惑いつつもどこか嬉しそうな表情とか

 

「まんま岡田やんwww」

 

って思ったし。

 

階段昇る時に、おずおずと手を差し出すところとか、

可愛過ぎて萌え死ぬかと思った。

でも、初々しい二人が素晴らしかった。

 

 

ごめん、岡田君にあんまりいいコメントできない。

ただひたすらに「侍だった」と言う感想しか言えない。

それくらい、彼は見事に「檀野庄三郎と言う侍」になりきっていたので。

それが全てである。

 

<終わりに>

映像はどこか古臭い感じで、その「フィルム撮影」で表現される、

ちょっとぼんやりしてるけど、でも温かみのある映像が凄く合っていた。

登場人物、風景そのどれをとっても素晴らしい映像に収められていたと思う。

それが本当に良かった。

レンタル始まったらまた観ようと思っているくらい、心に残った作品だった。

 

ただし、観る人を選ぶのは間違いない。

永遠の0」みたいに、わかりやすく観る人に訴えるシーンがあるわけでもないし、

その他ハリウッド作品のようなエンターテイメントが好きな方には全くお勧めできない。時間と金の無駄だから別のものを観たほうがいい。

ただ、エンターテイメントが好きだけど、

「歴史」と「日本人」に興味があるのであれば、楽しめるのではないかと。

 

 

それにしても、岡田君と堀北真希ちゃん。

11年ぶりくらいの共演だけど、本当にねぇ。

必死に「俺が助けるんだ!!」とのたまい、実際に助けた少女。

その二人は実は過去でも出会っていて、夫婦にもなっていたと。

脳内で勝手に生まれ変わり設定が作れるオタ脳万歳。

 

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